フロイト「精神分析入門」読書会(第六・七講)
第七 夢の顕在内容と潜在思想
第1段落:これまでのまとめ
・錯誤行為を研究した経験から、以下の二つを得ることができた。
- 夢の要素についての見解
・夢の要素はそれ自体が本来的なものなのではなく、他のあるものの代理物である
・代理物とは、夢を見た人は自覚していないが、その人の心の中にはそれについての知識が存在しているはずのあるもの(*知っているということを知らないもの=無意識)の代理物
・この見解は、夢の要素だけでなく、夢全体にも当てはまるとフロイトは考えている
2.夢の解釈の技法
・夢の要素についての自由連想によって、別の代理物を浮かび上がらせ、その別の代理物に基づいて、隠れているもの(無意識的なもの)を推測できるようにすること。
・(第五段落より)覚えている夢は、本来のものではなく、本来のものが歪められた代理物である。この代理物は、われわれが他の代理物を呼び起こして、本来のもの(夢の無意識的なもの)を意識化することに必ず役立つ。
第二段落:無意識の定義
・無意識的:
今後「隠されている」「手が届かない」「夢を見る本人の意識にとっては到達不能である」という代わりに、無意識的という言葉を使う。
(*前意識的)
・度忘れした言葉や錯誤行為の妨害意向などは、「その時は無意識的だった」と表現する。
・意識的:
・夢の要素自体と、連想によって新しく獲得された代理表象は、意識的と呼ぶ。
第三段落
・夢とは、全体としては「無意識的なもの」の歪曲された代理物
・夢解釈の課題は、この無意識的なものを発見することにある。
第四段落
・夢解釈の仕事をするときに従うべき3つの重要な原則
- 一見して夢が持っているような意味は無視する。(それは無意識的なものではないから)
- われわれは夢の解釈の仕事を、それぞれの要素に対する代理表象を呼び起こすことだけにとどめ、その代理表象について熟考したり、何か適切なものをふくんではいないかなどと吟味したりせず、それらの表象がいかに夢の要素からかけ離れていても気にしない
- 隠れた、求められている無意識的なものが自分から姿を見せるまでは、じっと待つ
第5、6、7段落:抵抗
・覚えている夢の記憶が正確でなかったとすれば、それは代理物を歪曲しているということであり、これにはなんらかの動機があるはず。
・夢の解釈を自分の夢に行ってみると、この仕事に対して何か抵抗するものがあることに気付く。
・さまざまな思い付きは得られるが、それらを吟味したくなったり、選択したくなる。
・思い付きに対して、以下の4つの反論をしてしまう。
1.あまりにもとるに足りない些細なものだ。
2.あまりにもばかげている。
3.ここには関係がない。
4.人に話すにはあまりにも不快だ。
・つまり、出発点の表象である夢の要素に捉われすぎたり、してはならないはずの選択をしたりしてしまう。
・こういう反論は、夢の解釈を失敗させてしまう。そのため、自分の夢の解釈をするときは、そういう反論に抵抗しなければならないし、他人の夢の解釈をするときは、夢を見た人に対して、このような反論が心に浮かんでも、全ての思い付きを報告しなければならないという不可侵の原則を言い渡す必要がある。
第8、9段落:抵抗の意味
・夢の解釈の仕事は、それがぶつかる抵抗にさからって遂行されるもの。
・(抵抗によって)抑えつけなければならないと思う思いつきこそ、例外なく、最も重要で、無意識的なものを発見する上に決定的な意味をもつものである。
・抵抗は夢の解釈を困難にしてしまうが、一方でこの困難こそわれわれを刺激し、この仕事は労力を払うに値するものだと考えさせもする。
・夢の要素であるところの代理物から、無意識的なものへと押し進もうとするときは、決まって抵抗に出会う。
・抵抗は力動的な概念である。
・抵抗には「程度」が存在する量的な概念である。抵抗が大きいほど、無意識的なものの大きな歪曲を結果し、当然、代理物から無意識的なものへの道も遠くなる。抵抗がわずかであれば、代理物は無意識的なものからそう遠く離れていないことになる。
第10段落以降:実際の夢分析の例
・夢の顕在内容と夢の潜在思想の関係は、多種多様である。
・(a)と(b)の例では、顕在的要素は潜在思想のほんの一部分。無意識的な夢の思想の中にある、大きい心的な合成物の中から、その一小部分だけが顕在夢に入り込んだ。
・第一の型(a):
・第二の型(b):
・夢の作業は歪曲にあるが、歪曲の一つの仕方は、断片や仄めかしによる代理形成である。夢の解釈の仕事は、夢の断片や仄めかしから全体を完成させていかなければならない。
・(c),(d),(e),では、顕在内容が潜在内容の歪曲ではなく、むしろもとの語源から出発した、潜在内容の一表現、その造形的、具体的形象化
*第三の型が見当たらなかった・・・。どれ?
第八講 小児の夢
- 2、3、4段落:
・夢の歪曲作用という問題を精神分析の技法で克服するのを試みる前に、歪みのない夢というものがあるならば、それを取り上げるのが妥当かもしれない。
・小児の夢は、非常に歪みが少ない。この種の夢は、短く、明確で、首尾一貫し、わかりやすく、あいまいではなく、しかもまた疑う余地がない。
・夢の歪曲は5-8歳くらいからすでに始まるので、4-5歳までに年齢を限れば、幼児型とでも名付けられる夢をぞくぞくと見つけることができる。なお、成人の場合でもある条件の下では幼児型に似た夢が見られる。
・小児の夢は非常に容易に夢の本質を明らかにすることができる。そして、フロイトは、この解明がすべての夢に当てはまることを期待している。
・小児の夢を分析するには、特別の技法の適用や、小児を問いただすことは不要。しかし、小児の生活をすこしばかり参考にする必要がある。
*小児の夢が歪曲されている要素が少ないと言える理由は
第5段落以降:
・小児の夢は、筋の通った、心的行為と呼ばれて少しもおかしくないもの。
・小児の夢は夢の歪曲が(ほとんど)ない。そのため、夢の歪曲は夢の本質ではないことが分かる。
・眠りを妨げる刺激には、身体刺激のほかに心的な刺激がある。満たされなかった願望は、眠りを妨げる心的な刺激となりうる。
・夢は刺激から生じる。
・夢は願望の充足である。小児の夢は、残念な気持ち、憧れ、満たされなかった願望などをあとに残すような日中の体験に対する反応である。夢はこの願望を、直接にむきだしに充足する。夢は幻覚的な体験で、この願望を満たされたものとして表現する。なお、夢を引き起こすものはつねに願望でなければならず、憂慮や計画や非難ではありえない。
・小児の簡単な夢においても、願望を体験に置き換えるという歪曲がある。
・夢を錯誤行為との比較で説明する。夢においては、妨害される意向とは、眠ろうとする意向。妨害する意向とは、心的刺激、あるいはなにがなんでも充足を求める意向である。夢もまた妥協の産物であり、願望は満たされるが、眠りは続いている。
夢が願望の充足であるということを補強するいくつかの事実
・白昼夢も願望の充足という点を満たしている。また、夢に関するいくつかのことわざも同様。
*「動物が自分が殺されるという夢をみるということを・・・」の下り、人間にはのちに死の欲動を認めているが、動物にはこれはないのだろうか?
・食事などの欠乏条件におかれた人を観察すると、きまってその欲求を充足させる夢を見ることを教えられる。
・性的刺激を受けてみる夢の場合は特殊。夢精を伴う夢の中で現実に欲求の充足を得られることがある。
・「焦慮の夢」自分の期待がいち早く成就することをみる夢
・「不精な夢」もっと眠っていたいと思う人が、すでに起きて洗面をすませたり、あるいはもう学校に来ていたりすることを夢に見る。
最後の段落
・小児の夢以外の夢は、われわれの考えているように願望の充足であるかどうかは、さしあたっては断言できない。