フロイト「精神分析入門」読書会(第五・六講)
第五講 種々の難点と最初のアプローチ
最終目標(1、2段落):
・夢が意味を持つことを立証する。
・夢そのものが、全ての人に見られる神経学的な症状である。
夢分析を進めていく上で障害となるもの(3、4段落)
- 夢を研究することには価値がないとする一般的見解
・夢を研究することは非科学的であると見なされている
2.夢は曖昧で、精密な研究の掲げる要請に応えようとしない
・夢の研究ではその対象すら不確実
・夢に見たことを話す時でも、みたままを正確に話したという保証はありはしない
反論(5段落)
- 取るに足りないように見える中にも、大事な兆候がその姿をちらつかせていることがある
- 夢の記憶が曖昧だという難点を取り除くには、夢を見た人が語るがままのものを、その人が見た夢とみなし、本人がなにか忘れたり、変更を加えたりしているかもしれないという顧慮を捨ててしまえばよい。
夢に対する学会の軽蔑は、むかし夢を過大評価したことに対する反動である(6,7段落)
夢とは何か? すべての夢に当てはまる共通点(8―12段落)
・第一の共通点:夢を見るときにはわれわれが眠っている。
・夢は眠りと目覚めの中間状態
・眠りとは、外界について何も知ろうとは思わず、私の関心が外界から引き上げられてしまっている状態のこと。
・外界から身を引き、外界の刺激を遠ざけてしまうことによって眠りに入る。
・眠りの生物学的な性格は休養であり、心理学的な性格は現実世界への関心の中断
・眠りの目的が休養であれば、夢は眠りにとって歓迎されない付属物である。なぜならば、眠っているときに心的活動はあってはならないからだ。しかし、心的活動が睡眠中も引き続き残ることはどうしても免れがたい。その残存こそが夢である。
・夢は身体的な刺激を与えられたときに直接起こる心的現象に過ぎない
・夢とは、眠っている間に働きかけてくる刺激に対して心が反応する仕方である。
・眠りを妨げようとする刺激、夢によって反応するような刺激とはどういうものかを探し当てれば、あらゆる夢の第一の共通点を解明したことになるだろう。
・ほかの共通点は極めて探しづらい。以下のいずれも多様。(13、14段落)
・感覚:視覚、聴覚、など
・持続時間:長い、短い
・明瞭さ:あいまい、はっきり
・感情の関与する様子や安定性
・結論:夢と睡眠状態の関係から、夢は眠りを妨げる刺激に対する反応であると結論づけた
・モーリの実験から、夢は眠りをさましてしまう刺激を自分なりに解釈している、しかも毎回違ったように解釈していることが分かる。
・体内からくる刺激は、夢にとっては、外部の刺激と同じ役割をすることがある
・夢というものはたんに刺激を再現するばかりではなく、これを加工し、刺激をほのめかし、ある連関の中にはめこみ、その刺激を何ものかで代理する。
第六講 夢判断のいろいろな前提と技法
夢の研究の道
・第一:眠りを妨げる刺激からの道
・第二:白日夢からの道
・第三:催眠状態から暗示された夢からの道
○前章は第一と第二、この章は第三の道について主に述べられている
仮定1:夢の研究を進めるために、夢は身体的現象ではなく心的な現象であると仮定する。
・「夢は心的な現象」=夢は夢を見ている人の作品であり、自己表現である
*どういうこと?
・夢の分析方法
・夢を見た人に向かって、あなたの夢はどんな意味をもっているのかと聞けばよい。
・なぜならば、以下の仮定2が成立するからだ。
・仮定2:夢を見た人は、その夢が何を意味しているかを知っているが、ただ自分が夢の意味を知っているということを知らないのであり、そのために自分が知らないと信じているだけなのだ
・仮定2は、催眠現象の領域において同じことが観測されており、かつ催眠状態において成り立つ関係を自然の眠りについて転用することは決して大胆な冒険ではないことから、仮定1とは異なり、すでに証明ずみの仮定であるといえる。
・仮定3:夢を見た人に「どうしてそんな夢を見るようになったのか」と尋ね、彼がその場ですぐに言うことをその説明とみなす。
・夢は一語だけの言い違いと違って、たくさんの要素から成り立っている。そのため、夢を諸要素に分解してしまって、それぞれの要素について別々に検討を加えてみることにする。
・反論:夢を見た人がその場ですぐ思いつくことが、まさに求められている説明をもたらしてくれるとか、そこに至る糸口を与えてくれるとか考えるのは恣意的な仮定であって、むしろ思い付きは随意的なものであり、求められている説明とは無関係なものではないのか」
・フロイト曰く、この反論はひどい誤りである。なぜならば、心とは自由ではないからだ。
・なんらかの夢を見た人をうながして、夢のある要素について思いついたことを語らせるとき、その人の出発点となる表象をたえず念頭に置いたうえで自由な連想のおもむくままに(=熟考を排除して)語ってもらう。
・この自由な連想(思い付き)は、心の内部の、意味深い体制によっていつも厳密に決定されている。
・調べてみると、思いつきは、発端となる表象による束縛のほかに、強い感情を伴う思想や関心の領域、すなわちコンプレクスに左右されていることが分かる。そして、このコンプレクスがそこに同時に働いていることは、その瞬間には本人にはわからない。
・反論:「自由な思いつきが制約を受けていることを認めたとしても、夢の要素に対する思いつきが、夢を説明するとは限らない」
・夢の研究においては、自由連想の刺激語の役目を務めるものは、「夢を見る人それ自体の心的活動に由来するもの、夢を見る人には未知の源泉から発しているもの」である。